病院長インタビュー

藤枝市立総合病院 毛利 博 事業管理者(院長)

医療に対する理念や方針、課題や改善策をお聞かせください。

 病院は、患者さんの命を救う場所です。医療人は全身全霊で患者さんと向き合い、救命の努力をします。その際に大事なのが、人間性。私は「医療者である前に、一人の人間であれ」といいたいですね。医療が急速に進歩する中、高度な外科系の手術テクニックや、緻密な内科系の診断技術は必須です。でも、患者さんの心のサポート、マインドセラピーという要素は絶対に欠かせません。医療の世界では、全人的な能力が問われています。医師も看護師も、医療の知識や技術だけではなく、その裏側にあるハートも磨いてもらいたい。かつて『医は仁術』といわれました。当院の基本理念は『厳しき科学と温かき心』。その流れを受け継いでいます。
 医師や看護師に無理難題を突きつけるモンスターペイシェントが問題になっています。患者さん側に誤解や偏った権利意識があるのは確かですが、医師側にも悪い部分があるのです。知識はハイレベルだが、言葉が足らない、話の内容が難しい。そんな知識偏重の医師が増えたように感じます。患者さんやその家族に医学用語や専門知識で語っても、理解してもらえません。不安や不信感が芽生えるだけです。この溝を埋めるための作業を常日頃から地道にやっていくことが、今後の日本の医療の課題でしょう。
 平成20年1月に院長に就任して、すぐに取り組んだことがあります。一人でこんな大きな組織は動かせないと考え、病院業務を分類し、担当別に6人の副院長ポストを新設し、情報の見える化を図ったのです。院長講話として、私の言葉で全職員に方針を伝え、問題を提起し、目標の数値を示しました。1日の入院患者数や外来患者数、救急車の受入れ数、手術件数など…。ブレない、ズレないを徹底した結果、徐々に成果が目に見える形で表れてきました。
 平成27年度には、救急センターを開設。それに併せ、病棟と外来の再編も予定しています。当院がますます明るく元気になり、地域医療に貢献できればと考えています。

人材育成に関するお考えや育成法を教えてください。

 当院の新人看護師の育成の基本は、まずは、さまざまな実務経験を積ませること。その間に、繰り返し面談を行い、本人の希望を尊重し、総合職か専門職かを選んでもらいます。総合職は、多岐にわたる看護知識や管理能力を身につけ、師長などのマネジメント職を目指すもの。専門職は、がんや救急、オペなどの専門分野をピンポイントで学んで認定看護師などを目指すもの。各人のキャリアアップをサポートするため、環境整備と支援を行っています。当院では、結婚や子育てなどで現場を離れた看護師の途中採用も積極的に行っています。院内見学やケアのシミュレーションなどを通じて、看護師業務への復帰を応援しています。復帰後の育成環境も充実していますよ。
 基幹型の初期臨床研修医が増えているのも当院の特徴です。今年度は10名。うち9名が県内出身者です。東京大学・浜松医大・山梨大学の各医局から派遣され、当院で1年間研修する8名を加えると、18名の初期臨床研修医が当院で学んでいます。医療の知識やスキルを身に付けるのはもちろん、人間的にも成長してくれるものと期待しています。

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